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2021/04/02 08:00
みとおしが、障害のある方の授産施設として山梨県に誕生したのが2005年。 やがて、 「障害のある方が、職人的な技を身につけて将来自立できたらいいな」 という思いが職員の間で芽生え、うどん作りからはじめた。 といっても、誰も経験がない。 まったくのゼロからのスタート。 書店をめぐり、うどんの作り方を本から学んだ。 手さぐりで、そろりそろりとみとおしの活動が動き出した。 山梨といえば吉田うどんが有名だ。 まともに勝負しても勝てないので、 さぬきうどんで勝負することにした。 麺機を導入して、うどんづくりの3日間講習にも参加した。 試行錯誤を一年ほど続けると、 みとおしのうどんらしさが見えてきた。 大事にしたのは、体に負荷をかけない材料。 施設でふるまわれる昼食も、週に2回はうどんだったと言う。 お菓子作りも始めた。 シフォンケーキ、クッキー、チョコレートクッキー。 利用者さん一人ひとりの、得意分野がちがうことに気づいた。 泡立てがうまい、滑らかにチョコを流しこむことができる、 適当だからこそクッキーの混ぜ込みがうまい。 それぞれの職人的な技を、お菓子に振り分けていった。 みとおし立ち上げメンバーの志村さんが言う。 「うどんにしても、お菓子にしても、 私たちより利用者の方が順応性が早かったんです。 それどころか、やりやすい工程を考えてくれた。 私たちの方が教えてもらうことが多いんです。 利用者がいなければ商品をつくって売ることができません」 2014年から、本格的なもの作りも始めた。 担当者は霜野さん。 「利用者さんたちの夢を叶えてあげてください、 という施設長からのお願いがあったんです。 私は美大出身なので、だったらアートで夢を叶えるお手伝いをしたいなと」。 霜野さんにはアイデアがあった。 「本物のりんごを形どった、りんごの小物入れ」をつくったらどうだろう。 決してつくるのは簡単ではない。 まずは、じゃがいもで始めた。 形がちがうじゃがいもの小物入れを、100ケ皆で作れないだろうか。 うどんやお菓子づくりの経験がある みとおしの利用者さんだったらきっとできる。 なにより、一つと同じ形のないじゃがいも・りんごの小物入れは、 一人ひとり特徴が違うみとおしの利用者さんそのもの。 りんごのまわりに、 新聞紙をちぎったものを水と糊で貼って貼って貼りまくる。 使う新聞紙の量は、目安二枚ぐらい。2週間乾かす。 その後、りんごをカッターで切る。 仕上げに障子紙を貼り、手染めの和紙を張って仕上げにかかる。 じゃがいも・りんごの他に、柿、さつまいも、グレープフルーツもやってみた。 染め紙の貼り方はそれぞれ。 色の組み合わせや貼り方もそれぞれ。 完成した小物入れの使い方もそれぞれ。 一カ月かけて、りんごの箱はやっと完成する。 霜野さんは言う。 「つくっているみんなが、本当に楽しそうにつくっている。 完成したら『見て!』を嬉しそうにもってくる。 その姿を見るのが私の喜びです」。 「手さぐり」を繰り返したみとおしは、 「手づくり」の豊かな世界にたどり着いた。