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2020/11/04 10:00

「これ見てください」

恵比寿と渋谷の中間に位置する「ワークセンターひかわ」を訪問すると、
出会い頭に利用者さんたちから言われた。
そこにあったのは刺繍作品だった。

「わ、面白い!これはロケットですか?」
「そう」
「上の3人は宇宙飛行士ですか?」
「上も全部ロケット」

のっけから面白い。
すると、別の利用者さんも作品を見せてくれた。

「芸術は爆発だ」とは、正にこのことじゃないか。

ワークセンターひかわは、36年前に誕生した。
障がいのある方の日中の居場所として、お母さんたちが始めたのだ。
はじめのころは牛乳パックのリサイクルなどをしていたが、
渋谷という土地柄ゆえ受注仕事はどんどん増えていった。
しかし、並行して自発的な開発もはじめた。
それが、再入荷未定ショップでも取り扱っている「かわしおり」だ。


皮を切り、刻印を打ち、色を塗り、磨く。
工程が多いため、障がいがあってもどこかには関われる

どんなに受注の仕事が増えても、
かわしおりの制作はつづけた。
「かわしおりを欲しいと言う人が、一人でもいればつづける。
 バチっと『やる』『やらない』を決めないのが、ひかわの良さです」
と、職員の清水智美さんは言った。

とはいえ、受注仕事に大半の時間を割いていたひかわ。
転機となったのは2011年の東日本大震災。
なんと、受注仕事が大幅にダウンしたのだ。
「みんな仕事をしたくてはりきって来るのに!」
待つ仕事だけでは厳しいと実感した。

そこで、手仕事の時間を設けた。
刺繍をしたい! イラストを描きたい!という声がメンバーからあがり
やってみよう!と試しに刺繍をしてもらうと、宝物のような作品が次々生まれた
「何これすごい!」
ワクワクした清水さんは、ひとりのメンバーの刺繍作品の個展をひらいた。
作品は完売した!
そこから、風向きが変わった。
ワクワクがメンバー間にも伝染し、
ユニークなアート作品が次々をうみだされてきた。
公募展にも入賞するようになった。
ひかわに、自発的なアート活動が少しずつ増えていった。
益々「かわしおり」の制作にも熱が入った。

かわしおりは、まず皮を切った後に、
種類がたくさんある刻印を選び、
打ち込んでいく。
これが実に難しい。
一人で刻印ができる「刻印のプロ」は、
ひかわの利用者さんのうち二人しかいないそうだ。
が故に責任感が強く、就業時間が終わっても、
仕事をつづける方もいる。
「作る喜び」に勝る喜びはない
カラフルな色ぬりの最終作業は金や銀のコーティング。
ひと筆ひと筆のラインは手仕事ゆえの揺らぎがある。
色を塗った後は、革紐をつける。
この作業も、丁寧さと緻密さが求められる。
こうして、多様なメンバーの手をリレーしながら、
かわしおりは完成する。


皮の切り方、刻印の選び方、色の塗り方。
どれをとっての無限の組み合わせがあるため、
同じものは一つとしてない。
同じものを作ってください、と言われても無理です
と清水さんは笑う。
直感と偶然が重なって、
一つひとつのテイストが生まれている。

コロナ渦で、みんながひかわに通えない日がつづいた。
そんな中、メンバーは「ひかわに行きたい」と訴えたそうだ。

「できることは、なんでもやろう。取り入れよう」
大らかでありながら、大胆なチャレンジ精神があふれている。
ワークセンターひかわは、ひとつの「理想的な働き場所」を実現している。

推薦:一般社団法人障害攻略課 澤田智洋/ライラ ・カシム