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2020/11/04 10:00

アトリエ福花(FUCCA)は、まだ若い。

B型作業施設としてオープンしたのは2016年。
だけど、魅力的なものを次々と生み出している。

笹塚駅から5分ほど歩くと、「渋谷まる福」というお店が見えてくる。
こちらは2013年にスタートしたA型事業所。
出来立てのパンや、アトリエ福花で開発されたものが売っている。

「いらっしゃいませ!」
パン屋の調理場で作業をしていた男性が、
作業の手を休め、挨拶をしてくれる。
陳列された魅力的なアイテムと相まって、
なんだかすごく「受け入れられている」気持ちになる。

建物の二階に上がると、
「おはようございます」「ありがとうございます」
という声が聞こえてくる。
朝礼の最中だろうか。
終わると、それぞれ自分の席に着席して、仕事のはじまり。
絵を描く、貼る、縫う。
人によってやっている仕事はちがう。
だれもが真剣な眼差しで、
ウロウロと歩くこちらには脇目も振らず、手を動かす。

一際目を引いたのは、アブラハム グラスという男性だ。
通称、アビー。
彼だけは少しキョロキョロと辺りを見渡しながら、
突然の闖入者たち(私たち)に目を向けた。
実は彼は、福花きってのアーティスト。
アビーが描く「フォント」は、
福花のあらゆるものに活用されている。

独特の「アビーフォント」にはファンも多い。
試しに描いてもらった漢字もいい味を出しているそうで、
今後新しいアイテムに活かしていくそうだ。

今回出品しているポーチに描かれた絵も、
アビーが描いたものだ。
まるで生命を宿っているかのような三角形たちは、
よく見ると同じ形は一つとしてない。


別の女性は、黙々と手縫いをしていた。
写真を撮るのをはばかられるほどの集中力だ。
よく見ると、小さなビーズを、
丁寧に縫っている。

実はこちらも、今回出品しているイヤリングとピアス。
もちろん一つひとつハンドメイドだ。

「好きなイヤリングをつくっていいよ」
と言われても、みんなはじめは何を作っていいか分からなかった。
でも、福花の初期メンバーである職員の石塚浩子さんが、
「フリーハンドでいいからね!」と声をかけたところ、
メンバーのそれぞれらしさがどんどん現れてきた。
ユニーク な「アルファベットピアス」も、一階のショップで一際目を引く。

石塚さんは、こう言う。
「最初は知的障がいを持つ方が2、3人いて、何からつくろうか?というところから始まりました。
 お花のコサージュをつくったりして。
 でも、だんだんと利用者さんが増えてきたので、
 その人に何ができるのかな?を中心にものづくりをすることが増えたんです」

例えば、ある男性は、はじめは何を描いていいか分からなかった。
でも、彼が時代劇が好きという話を石塚さんが知り、
試しに水戸黄門を描いてもらったすごくよかった。
「何を描きたい?」と聞くと、
実は答えが限られてしまうので、
外部から巧みにリードして、引き出していくことも大切だという。

今でこそスターのアビーも、
同じように何を描いていいか分からなかったという。
石塚さんが枠だけを描き、まずは色を塗ってもらうところから始まった。
徐々に「カラー」が出てきて、
今ではどこからどう見てもアビーテイストである。

もともと「福花」という名前には、
「福祉に花を咲かせましょう」という意味合いを
込めたという石塚さん。
もちろんその思いは着実に現実のものとなっているが、
なにより、障害のあるメンバーの「才能という花を咲かせましょう
という思いが伝わってくる。

石塚さんはこう言った。
「一般のレールから外れたときに、人はそこに戻ろうとするし、
 周囲も戻りなさいと言う。
 でも、そこに一生懸命戻らなくていい。
 新しいレールをつくればいい
 『本線からハズれてもいいじゃない』と私は思う」

それぞれのレールが、
並行して、蛇行して、ときには交わりながら敷かれていく福花。
そのレールは、まるで大地をうねりながら進む根っこのようだ。
次にどんな花が福花で咲くのか。
楽しみでならない。

推薦:一般社団法人障害攻略課 澤田智洋/ライラ ・カセム